
エネルギーが少なくなっている時代だからこそ、省エネであっても快適な家を作りたいということです。
省エネ性能に優れた建物は「快適な暮らし」を生み出します。
設計者としては、ハードルが高いけれど「パッシブハウス」を建てたいですよね。
なんたって温度変化のない家は快適なのですから。
「パッシブハウス」は日本では聞きなれない言葉ですが、簡単に言うと、世界基準の「快適さ」と「省エネ性能」を満たした家です。
耐震構造を計算するように、きちんと「エネルギー」を計算してから家を建てます。
温度を調節する簡単な機械としてエアコンは必要です。
ただし、気密性・断熱性に圧倒的に優れているため、世界基準で決められたエネルギー量で家のどこにいても同じ温度で快適に過ごすことができます。
当事務所で過去に設計された施主様は「気候がいい時期は冷暖房のスイッチを切る。」それで十分と言っておられます。
機械として動いているのは熱交換換気扇だけ・・・。
そのわずか数十ワットのエネルギーだけで建物全体の空気を入れ替え、室温を保っているのです。
ドイツで生まれた「パッシブハウス」の最大の特徴は、その建物性能が客観的に認定されているという点です。その認定基準は非常に厳しく、今の日本でその設計技術・ノウハウを持つ者は極端に少ないのが現状です。
そんな厳しい基準だからこそ、ごまかしのない「快適さ」と「省エネ性能」を備えた家が実現します。
今、ドイツ発祥の「パッシブハウス」が、世界中で注目され、その場所ごとの気候に合わせて建てられています。私は日本でも各地の日射、気候・周囲の建物・人の数・建物用途に合わせて設計・設備・資材・デザイン等をトータルで考えて建てることが重要であると考えます。
▲PHPPの計算結果
建設地に適した「かたち」を決める。建設地の周りにはいろいろな建物が建っています。その中で設計する以上、利用できる自然エネルギーは方向が限定されます。ですから、建設地に適した「かたち」を探す事が大事です。
▲建設地に適した「かたち」を決める。
夏は暑く、冬は寒いのが、日本の特徴です。その昔、関西のある高級住宅で、「夏用のリビング、冬用のリビングがあって、季節に合わせて部屋を移動していた」と聞いたことがあります。建物内の避暑地に行くような感じでしょうか。
これからは、断熱性能をあげた上で夏に向く住まいとして直射日光を窓から入れない。冬に向く住まいとして直射日光を窓から入れることの両方に対応するハイブリッドな建物が求められています。
▲屋内外の温度変化を防ぐ「厚い断熱壁」
「雨が多い」「夏は暑く、冬は寒い」これこそが日本の自然の最大の特徴です。だからこそ、自然を感じられる住まいでありながら温度変化のない、結露しない、カビ・ダニの発生しない、やせ我慢しない、ウイルスの発生も抑える健康に暮らせる家づくりを目指します。
▲太陽熱を取り込む「大きな開口部」
「パッシブ」の考え方を実現するためには、太陽光などの自然エネルギーも含め、「入ってくる熱エネルギー」「逃げていく熱エネルギー」をどのように効率的に制御し・活用するかを「PHPP Design Software」で徹底的に計算します。
これには、窓の方位・角度、遮蔽物の位置、ガラスの日射透過性能、ガラスの熱伝導率などが関係し、建築物理学の知識が必要です。
▲建設地の気候データを把握するため「PHPP」というソフトで徹底的に計算(いくつもある結果のほんの一部)
隙間風は「漏気」と言われ、良いことではありません。窓を開けての換気や機械を使っての給排気とは別物です。気密性の低い建物は漏気箇所で結露等が生じやすく、カビが発生しやすくなります。さらに「漏気」によってカビ等を室内にまき散らしてしまいます。やはり気密性を高め、所定の場所で換気することが一番望ましいのです。気密性があっても熱交換換気扇により、日本の法律に合わせ新鮮空気を出し入れします。
▲良好な室内の空気質を保つ「熱交換換気扇」
断熱、高気密であるパッシブハウスは、これまでの戸建て住宅と比べると、建築費(=イニシャルコスト)が高くなります。
しかし、建設後のランニングコストを検討したことはあるでしょうか?
ローンで建物を建てられる方は「建設費+建設後のランニングコスト」が本当の意味でのローンといえるでしょう。
建設費と建設後のランニングコストを同時に計画されることをお勧めします。